chapter10: 秘密のバイト -前篇-
「この頼久、神子殿の僕でございますゆえ…」
神子殿に改めて忠誠を誓う頼久さん。
「しむ京であろうと、神子殿は神子殿。仕えるべき我が主にてございます」
「頼久さん。そんなこと言わないでよ。私達仲間でしょう?私、頼久さんに主だなんて思って欲しくない…。普通の女の子として見て…」
「神子殿……。従者の私にも平等に接してくださるお優しいお心……。改めて敬意を表します」
そこに丁度遅い夕食を終えた友雅がやってきました。
「…わたしはこんなに大切なことを今まで忘れていたのか……。兄上…っ」
心のかけらを一つ取り戻し、「ちゃららんっ」という効果音と共に想う心の星を上昇させる頼久。
「はっ……なにやらこの、湧き上がる暖かい感情はなんであろう……これが…………もしや恋…?」
神子の慈悲深い心に心酔しています。
「………………」
「…………」
「……………」
顔を見合わせる二人。
「……………はっ」
思わず立ったまま寝そうになる猛烈眠い友雅殿。
眠くても嫉妬はちゃんとします。
「神子殿。もう遅いから帰りなさい。」
追い返します。
「頼久、欲求不満なんだね?私が構ってあげてないから…」
「………いえ…あの……、神子殿には心のかけらを取り戻していただいただけで……」
「ほぉ……。アクラムや翡翠や頼忠からも返してもらったというわけなのかな」
「あの…………そういうわけでは……」
「ずいぶんと沢山心のかけらをお持ちだったのだねぇ」
「………………」
「本当の恋がどんなものか、たっぷり教えてあげるとしようか」
しかし今日も二人のスイートルームは鷹通たちに占拠済み。
友雅殿は、この場で決行することにいたしました。
その夜は明け方近くまで、御簾でしかさえぎられていない防音効果皆無の食堂から、頼久さんの嬌声が絶えなかったとか。
しばらく頼久さんは、他の八葉の顔がまともに見られない日々が続いたといいます。