chapter12: 永泉様の引越し -前篇-




朝っぱらから悪ラムが二体来ています。



1 「奴は誰だ?!我と同じ装いをしているが、決して仮面を外した我ではないぞ?!わかるか?!」
 「いや…、お前の素顔はもう見ているから」
1 「ぬぉ!!そ、そうであったな」

頼久さんに鬱陶しく絡みます。







こちらもこちらで、うろたえているようです。

2 「奴は何者なのだ?我がもう一人いるではないかっ!」










 「少し落ち着かぬか」
2 「う、うむ」
 「動揺するのも分かる。私も、この世界に『頼久』が3人いるのだからな」

悪ラムその2を宥める頼久さん。















ようやく落ち着きを取り戻した悪ラムその2は、
我に返るとおトイレに行きたかったことを思い出しました。

2 「厠はないのか?!この屋敷は?!」

すぐ隣の部屋にあるというのに、我慢の限界に達した悪ラムは、漏らす前に森へと帰っていきました。



2 「じゃ。」

なぜ別れをたった今帰ってきたばかりの天真に告げるのか。









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 悪ラムその1も帰った翌日。



 今日は高貴な方がこの屋敷にみられるとのこと。
ですのでこうして華を活け、部屋を少しでも綺麗にと、尽力しております。

友雅殿は

「あの方が来られた。迎えに行ってくる」

とおっしゃると、明朝御発ちになられました。
神子殿もすでにお越しになっておられます。



剣術しかとりえの無い私ですが、歌などお贈りさせていただきたく、
僭越ですがあの方にお喜びいただければと、この『空桶』とやらで修練してみました。

こう見えましてもわたくし、持ち歌など数曲持っておりますれば―――



♪〜 ああ 貴方の涙 流れる涙 しなやかな滝のごとく強く
    愚かな日々を 果て無き罪を 清めるがごとく我が胸打つ 熱い禊となった〜〜〜 ♪


頼久さんのお歌はやたら「罪」のフレーズが多めです。






しかし、頼久さんの大練習も空しく
この後2、3度強制終了をくらい、時がお話の冒頭にもどります。











永泉さまお引越しのお話には直接関係ないですが、



ペットを飼うとすぐに強制終了してしまうので、泣く泣く手放したわんこです。
度々幽霊になって出てくるのですが、
幽霊になった犬でもスキンシップできるんだぁ…と初めて知りました。
餌をあげたり、ほめたり叱ったりもできるの。